【事例Ⅳ】NPV(正味現在価値)の求め方|投資判断・割引率・現価係数をわかりやすく解説
中小企業診断士2次試験 事例Ⅳ最難関のNPV(正味現在価値)を完全解説。CF計算、割引率、現価係数、回収期間法との違い、税引後CFの考え方まで具体例で徹底攻略。
NPVが苦手で、事例Ⅳを「捨て科目」にしようとしている受験生へ。
少し待ってほしい。NPVを捨てると30〜40点を丸ごと失う可能性がある。しかもNPVは手順さえ覚えれば確実に解ける計算問題だ。苦手意識のほとんどは「最初の理解が曖昧なまま計算に入ってしまった」ことが原因なので、一度基礎から整理してみよう。
NPVの直感的な理解から始めよう
まず、こんな質問を考えてほしい。
「今の100万円」と「1年後の100万円」、どちらが価値が高いか?
答えは「今の100万円」だ。今受け取れば銀行に預けて利子が付く。1年後の100万円は、利子分だけ「今の価値より低い」。
この「お金の時間的な価値の違い」を計算に組み込んだのがNPV(正味現在価値)だ。
NPV = 将来得られるキャッシュを「今の価値」に換算した合計 − 今すぐ払う初期投資額
NPVがプラスなら「この投資は元が取れる(資本コストを超えるリターンが期待できる)」、マイナスなら「割に合わない」という判断になる。
NPV計算の5ステップ(完全解説)
F社の設備投資案を例に、一緒に解いてみよう。
F社のデータ
- 初期投資額:1,800万円(今すぐ支出)
- 設備の耐用年数:5年(残存価値ゼロ、定額法で減価償却)
- 投資による毎年の売上増加:600万円
- 投資による毎年の費用増加(減価償却費を除く):120万円
- 法人税率:40%
- 割引率(資本コスト):8%
- 年金現価係数(8%・5年):3.993
ステップ1:年間の減価償却費を計算する
減価償却費 = 1,800万円 ÷ 5年 = 360万円/年
ステップ2:年間の税引後CFを計算する
ここが最重要ステップ。公式はこうだ。
年間CF = (売上増加 − 費用増加) × (1 − 税率) + 減価償却費 × 税率
= (600 − 120) × (1 − 0.4) + 360 × 0.4 = 480 × 0.6 + 360 × 0.4 = 288 + 144 = 432万円/年
後半の「減価償却費 × 税率(= 144万円)」がタックスシールドだ。
減価償却費は現金の支出を伴わない費用だが、税金の計算上は費用として差し引ける。つまり「現金は出ていかないのに、税金が安くなる」という節税効果がある。これを忘れると確実に不正解になる。公式ごと体に叩き込んでおこう。
ステップ3:割引率と現価係数を確認する
割引率は問題文に「資本コスト8%」のように与えられる。現価係数の表も通常は問題文に付いている。
| 年 | 割引率8%の現価係数 |
|---|---|
| 1年後 | 0.926 |
| 2年後 | 0.857 |
| 3年後 | 0.794 |
| 4年後 | 0.735 |
| 5年後 | 0.681 |
毎年同額(432万円)が続くなら、年金現価係数を使うと一発で計算できる。
年金現価係数 = 0.926 + 0.857 + 0.794 + 0.735 + 0.681 = 3.993
ステップ4:CFの現在価値合計を求める
CF現在価値合計 = 年間CF × 年金現価係数 = 432 × 3.993 = 1,724.976万円
ステップ5:NPVを求める
NPV = CF現在価値合計 − 初期投資額 = 1,724.976 − 1,800 = −75.024万円
NPV < 0 なので、この投資案は採択すべきでないという結論になる。
残存価値がある場合の計算
設備を5年後に200万円で売却できる場合、その200万円も「5年後のCF」として現在価値に変換して加える。
追加のPV = 200 × 0.681 = 136.2万円 修正後NPV = −75.024 + 136.2 = 61.176万円(> 0 → 投資採択)
3つの絶対に外せないポイント
タックスシールドを忘れない
「減価償却費 × 税率」をCFに足すことを忘れる受験生が非常に多い。試験本番で焦ったとき抜けやすいので、計算前に必ず確認するチェックポイントにしておこう。
現価係数と年金現価係数の使い分け
- 現価係数:各年のCFが異なる場合、年ごとに掛ける
- 年金現価係数:毎年同額のCFが続く場合、まとめて掛けられる
問題文をよく読んで、毎年同額かどうかを確認すること。
初期投資は割り引かない
初期投資は「今この瞬間」に支払うので、現在価値そのままだ。割り引く必要はない。これを割り引いてしまうミスが稀にある。
タックスシールドを忘れると確実に不正解。公式を体に叩き込んでから本番に臨もう。
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